コラム
「共同親権」導入の改正家族法 離婚後の親子関係や生活はどう変わる?(前編)
令和8年4月1日に、民法等の一部を改正する法律が施行されました。今回の改正は、離婚後の子の養育に関するルール等を見直すもので、親の責務、親権・監護、養育費、親子交流、財産分与など、離婚後の親子関係や生活に関わる重要な事項が対象となっています。
このコラムでは、その中でも、新聞やテレビなどで頻繁に報じられていた「共同親権」を中心に、改正のポイントを解説したいと思います。
1.離婚が成立する主な手続
本題に入る前に、まずは離婚の手続きがどのように進んでいくのか、現在の実務を簡単にご説明しましょう。
現在、「離婚」の方法としては、協議離婚、調停離婚、審判離婚、判決離婚、さらに訴訟上の和解や認諾による離婚など複数のルートが予定されています。
(1)協議離婚
協議離婚は夫婦双方に離婚意思があり、離婚の届出がなされた場合に成立する離婚です。厚生労働省「令和6年人口動態統計」によれば、全体のうち協議離婚の占める割合は87.5%におよび、約9割が協議離婚を選択していることがわかります。
(2)調停離婚
次に多いのが調停離婚です。調停は、家庭裁判所で、裁判官や家事調停委員などで構成される調停委員会の関与のもとで進められ、両当事者が合意に至れば調停が成立、すなわち離婚が成立します。
(3)審判離婚
審判離婚は、調停が成立しない場合でも、離婚自体や主要な条件について大きな争いがなく、家庭裁判所が相当と認めるときに、調停に代わる審判によって離婚を成立させる手続です。ただし、当事者から適法な異議が出されると審判は効力を失うため、実務上は限定的に用いられています。
(4)判決や訴訟上の和解・認諾による離婚
調停でも合意に至らない場合には、離婚訴訟に進むことがあります。訴訟では、法定離婚事由の有無などが法律と証拠に基づいて審理され、請求が認められれば判決によって離婚が成立します。離婚訴訟に進んだ場合でも、判決が出る前に和解や請求の認諾によって離婚が成立することもあります。
2 「共同親権」と「単独親権」
このように、離婚に至るまでには様々なルートがありますが、未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、そのいずれにおいても「親権」が問題になり得ます。
令和8年4月1日に施行された改正民法では、そんな「親権」の規定に大きな変更がありました。
それが「共同親権」です。もともと、民法には、
「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。」(旧819条1項)
と規定されていました。この条文が、
「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。」(819条1項)
と、改正されたのです。
条文からも分かるとおり、離婚後、必ず「共同親権」になるわけではなく、共同親権とするか、単独親権とするかは、当事者の協議や裁判所の判断によって決まります。
協議離婚や、調停において当事者が合意できる場合には、夫婦の合意によって共同親権にするかどちらか一方の単独親権にするかを決めることになりますが、争いがある場合には裁判所が判断をすることになります。
たとえば、虐待があるケースや、精神的・身体的DVのおそれがあったり父母間に強い支配関係があったりして、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるケースなどでは、裁判所は単独親権を定めることになります。
しかし、そのような事情が認められなかった場合に、必ず共同親権と定められるかといえば、そうではありません。共同親権が導入されたからといって、離婚後の親権が共同親権を原則とする制度になった訳ではなく、あくまで「子の利益のため、父母と子の関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮」(民法819条7項)して、共同親権とするか単独親権とするかが判断されます。
3 「共同親権」なら子どもは誰と暮らす?
では、離婚後も「共同親権」となった場合に、子の生活はどう変わるのでしょうか。
もしかすると、「共同親権」と聞いて「子どもが父親と母親の家を行ったり来たりして生活することになるの?」と思う方もいるかもしれません。
確かに「親権」は、親が子の身の回りの世話や教育をしたり、財産管理等をしたりする権利・義務ですから、親権には、子どものそばで日常生活の世話をする監護権も含まれます。もっとも、離婚の際には「子の監護について必要な事項」(766条1項・2項)を定めることとされています。そのため、離婚後に共同親権を選んだ場合でも、親権者の定めとは別に、必要に応じて、子の主たる居所や日常的な養育を誰が担うかなどを定めることになります。共同親権だからといって、必ず子どもが父親と母親の家を行き来しながら生活することになる訳ではないのです。
前編では、共同親権について、基本的な事項の解説を行いました。後編では、「『共同親権』でも単独で決められること」や「養育費」「財産分与」「親子交流」の改正について解説しています。