コラム

遺言の作成をご検討いただきたい15のケース

2016.08.06

執筆者 弁護士 古家野 彰平

こんにちは、弁護士の古家野彰平です。
暑い日が続きますが、もうすぐお盆休みです。
そこまでお仕事、がんばっていきましょう。

ところで、弁護士の業界では、お盆の前後で、法律相談の件数が増えると言われている分野があります。
それは遺言・相続の分野です。

お盆は、親族が一斉に集まる限られた機会です。
そこで話し合われる中で、相続のことや、誰が遺産を承継するかについてもテーマに上がっているのでしょう。

そこで、今回は、遺言をテーマにお話しようと思います。

遺言は、遺産分割をする際の親族間の紛争回避や円滑な事業承継にとって、とても有意義です。
当事務所でも、積極的に遺言の作成をお勧めしています。

しかし、気になってはいても、なかなか実際の行動に移せずにいるという方も多いのではないでしょうか。

そこで、以下では、遺言の作成を特にご検討いただきたい15のケースを具体的にご紹介します。
もし該当する項目がありましたら、遺言の作成をぜひ前向きにご検討いただきたいと思います。

1 相続人間で感情的な対立に陥りがちな場合

①子どもたちの仲が良くないケース
②前の配偶者との間に子どもがいるケース
③愛人との間で子どもがいるケース

相続人の仲が悪い場合はもちろん、相続人に疎遠な親族がいる場合にも、遺産分割を巡って感情的な対立が生じることが多いです。
遺言で分割方法を指定しておけば、争いを少なくすることができます。

④子どもたちに生前、多額の贈与を行っているケース

他の子どもに対する不公平感から、紛争になりがちです。
遺産分割では、特に、特別受益が激しい争点となることが多いです。
予め遺言で遺産の分け方を決めておきましょう。

 

2 遺産を取得させたい人が、そもそも相続人ではない場合

⑤内縁の配偶者に遺産を取得させたいケース

内縁の配偶者には相続権がありません。
内縁の配偶者に遺産を取得させるには、遺言を作成して遺贈する必要があります。

⑥結婚した相手に連れ子がいるケース

いわゆる「連れ子」については、新たに養子縁組をしない限り、相続権はありません。
養子縁組をしない状態で、連れ子に遺産を取得させるには、遺言が必要となります。

⓻そもそも、相続人(配偶者、子、両親、兄弟姉妹)がいないケース 

この場合、遺言がなければ、遺産は最終的には国庫に帰属することになります。
それはもったいないですよね。
お世話になった方などに財産を遺贈することが考えられます。

 

3 遺産を相続分に応じて分けたくない場合

⑧遺産を取得させたくない相続人がいるケース

ギャンブル好きで財産をすぐに失ってしまいそうな子や、感情的な対立のある子など、財産を渡したくないという場合です。
但し、相続人のうち、配偶者と子ども、両親には遺留分がありますので、これに注意する必要があります。

⑨特定の人に多くの遺産を渡したいケース

障害があり生活資金が多く残しておきたい子などが考えられます。
この場合も、相続人の遺留分に注意する必要があります。

⑩配偶者はいるが、子どもがおらず、また、自分の兄弟姉妹がいるケース

この場合、自分の兄弟姉妹も相続人になり、そちらにも遺産がいくことになります。
ですので、配偶者に全ての遺産を取得させるには、遺言を作成する必要があります。
なお、兄弟姉妹には遺留分はありませんから、遺留分は気にしなくても大丈夫です。

 

4 遺産分割がしづらい場合

⑪遺産が自宅土地建物しかなく、複数いる相続人のうち1人に自宅を取得させたいケース 

自宅土地建物を相続する相続人は、他の相続人に代償金を支払う必要があります。
しかし、遺産の中にキャッシュがない場合、代償金の調達に苦労します。
遺言を書いておけば、他の相続人は遺留分しか主張できず、解決に必要なキャッシュはおよそ半分で済みます。
不動産に限らず、遺産が分けにくい状態になっている場合は同様の問題が生じる可能性があります。

⑫遺産の内容を良く知る相続人がいないケース

相続人が疎遠であったりして、遺産の内容を知らない場合などです。
相続人としても、そもそも何を相続したのかがわかりません。
遺言書で遺産の内容を記載しておくとよいです。

⑬行方不明の相続人がいるケース

遺産分割協議は、相続人全員でしなければなりませんが、行方不明の相続人がいる場合、それがかないません。
遺言により、被相続人に身近な相続人に財産を取得させる等をしておくことが可能になります。

 

5 経営者の場合

⑭経営している会社の株式があるケース

会社の経営権を巡って、株式を誰が取得するかが争いになる可能性があります。
そうすると、事業活動にも悪影響が出てしまいますので、遺言で誰に株式を取得させ、会社を継がせるか、決めておくとよいでしょう。

⑮その他事業用資産があるケース

特許、不動産など、事業に必要な資産が、遺産分割によって複数の相続人に分散してしまうと、事業活動に支障が出る可能性があります。

 

いかがでしたでしょうか。
遺言に書くべきことは、おひとりおひとり異なります。
まずは、お気軽にご相談ください。