コラム
自筆証書遺言作成のポイント
1 自筆証書遺言とは
自筆証書遺言は、原則として、遺言者本人が全文を自筆で作成する遺言書のことをいいます。「遺言を書いておきたいけれど、公正証書にするのはハードルが高い」「まずは自分で作成してみたい」とお考えの方が利用しやすいのが自筆証書遺言です。
もっとも、自書で手軽に作成できる反面、法律で定められた形式要件を満たしていなければ、無効と判断されてしまう可能性があります。
今回は、自筆証書遺言作成時の形式面の注意点をご説明します。
自筆証書遺言については、民法968条がその方式を定めていますので、以下では、順に説明します。
2 自筆証書遺言の形式
(1) 基本の形式要件
民法968条1項 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
自筆証書遺言作成の際の形式要件は、以下の通りです。
① 全文を自書すること(後述しますが、財産目録はパソコンで作成する方法もあります)
② 作成日を自書で記載すること
③ 氏名を自書すること
④ 押印をすること
特に注意が必要なのは、②の作成日です。「昭和四拾壱年七月吉日」と記載して、遺言全体が無効となった裁判例があります(最判昭和54年5月31日)。最高裁は、日付は、「暦上の特定の日を表示するものといえるように記載されるべき」と判断しました。必ず、「令和8年8月1日」のように年月日を特定して記載してください。
(2)自書ではない財産目録を添付する場合
民法第968条2項「前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉 (自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面) に署名し、印を押さなければならない。」
平成30年の民法改正により、自筆証書遺言においても、財産目録についてはパソコンで作成したものや登記事項証明書、通帳のコピーなどを添付することが認められるようになりました。
そのため、自書ではない財産目録を作成する場合は、上記①~④に加えて、以下が要件となります。
⑤ 財産目録は、自書した遺言の本文が記載されている用紙とは別の用紙を用いて作成すること
⑥ 財産目録の全てのページに(両面印刷している場合は両面それぞれに)自書で署名、押印すること
特に、⑥の財産目録の全てのページに自書で署名、押印することは、忘れてしまうことが多いので、注意してください。
訂正の方法を参考に図で示しました。

3 自筆証書遺言書保管制度
令和2年からは、自筆証書遺言書保管制度が始まりました。
この制度では、自筆証書遺言を法務局へ預けることができます。
主なメリットとして、①遺言書の存在が分かりやすい(死後の通知制度)、②紛失や盗難を防止できる、③偽造・変造のリスクを減らせる、④相続開始後、家庭裁判所の検認が不要というものがあります。
公正証書遺言の作成よりは手数料が安く、また、公正証書遺言にはない、相続人に対する死後の通知制度がありますので、遺言書の存在を相続人などに知らせ、相続開始後にその内容を確認できるようにしておきたい場合には、利用を検討する価値があります。ただし、法務局が行うのは自筆証書遺言の方式についての外形的な確認であり、遺言内容の法的な有効性を保証するものではないことに注意が必要です。
4 内容面での注意点
このコラムでは、内容面についての説明は避けますが、形式要件を満たしていても、内容が曖昧では相続人間の争いにつながりかねません。
そのため、土地・建物は所在地・地番・家屋番号、預金は金融機関・支店・口座番号、株式は銘柄・株数など、できる限り具体的に記載することが重要です。
5 まとめ
遺言書に記載できる事項は多岐にわたります。遺留分への配慮や、遺言執行者を指定するかどうかも重要な検討事項です。
せっかく遺言を作成しても、それが理由で相続人間の争いになってしまっては、遺言者の意思を十分に実現できず、本来の目的を果たせないことにもなりかねません。
ご自身だけで判断することが難しい場合には、遺言者の意思を適切に実現し、将来の紛争を防ぐためにも、弁護士への相談をご検討ください。