コラム

特定商取引法の改正~クーリング・オフの電子化~

2022.08.17

執筆者 弁護士 三代 昌典

1 はじめに

 令和3年6月9日、特定商取引に関する法律(以下「特商法」といいます。)の一部を改正する法律案が成立し、同月16日に公布されました(以下「本改正」といいます。)。
 本改正ではいくつかの改正項目がありますが、本コラムでは、令和4年6月1日から施行されている、世間に最も馴染みが深いと思われる「クーリング・オフ」に関する改正を取り扱います。

2 クーリング・オフについて

 クーリング・オフとは、いったん契約を締結した場合でも、一定の期間内であれば無条件で契約を解除できる制度です。そして、本改正までは、クーリング・オフは「書面」によって行う必要がありましたが(改正前特商法第9条1項)、本改正により、「書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)」によって行うものとされました(特商法9条1項)。

3 電磁的記録による具体的な通知方法

 事業者は、合理的な範囲内で、クーリング・オフに係る電磁的記録による具体的な通知方法を示すことができます。そのため、電磁的記録により通知を行う際には、まずは事業者による通知方法の指定の有無を確認し、指定があればそれに従います(但し、クーリング・オフの方法を不当に制限する場合には、通知方法の限定が無効となる可能性があります。)。また、通知を行う際には、契約の特定に必要な情報(契約年月日、契約者名、購入品名、契約金額等)やクーリング・オフ通知を発した日を記載します。

4 通知の効力発生時期

 クーリング・オフの効力は、電磁的記録による場合も含め、通知を発した時に生じます(特商法9条2項)。
 したがって、例えばメールで通知を行う場合、事業者の指定したメールアドレス宛てに解約通知のメールを送信することで通知の効力が生じます。
 なお、送信先のメールアドレスが事業者の指定したものであることを証拠化するため、事業者の指定する送信先メールアドレスが記載された文書は大切に保管し、それがウェブページ上で掲載されているだけの場合には当該ウェブページを印刷して保管する等の対応をしておいた方が良いでしょう。

5 通知を発信したことの証拠化

 本改正前は、クーリング・オフの通知書面を送付した証拠を残すため、書面のコピーを取った上で特定記録郵便や内容証明郵便等で郵送することが望ましいとされていました。
 本改正で導入された電磁的記録による場合も、クーリング・オフの通知を行った証拠を保存するため、電子メールであれば送信メールの保存、ウェブサイト上の専用フォームであれば画面のスクリーンショットの保存等の対応が望ましく、さらにパソコン操作に不安がある方はこれらを印刷したものを別途保管しておいた方が安心かもしれません。
 特にウェブサイト上の専用フォームで送信する際には、送信ボタンをクリックすることで安心してしまい、証拠化まで気が回らないというケースも増えるのではないかと思いますので、最後まで気を抜かないよう注意が必要です。

6 まとめ

 以上のとおり、本改正によってクーリング・オフの通知方法の選択肢が広がり、内容証明郵便等について全く知識がない方でも、クーリング・オフの通知を行うハードルが下がったものと評価できます。
 一方、通知方法の多様化により、通知を行ったことの証拠化をより一層意識する必要がありますので、後の紛争を防ぐためにも、証拠化まで慎重に対応していただければと思います。