コラム

展覧会をかたちにする学芸員とキュレーション

2025.12.25

執筆者 弁護士 朝倉 舞

 キュレーターということばが、一般的になってきました。
 日本語では一般に「学芸員」と呼ばれます。少し前のテレビドラマでも、主人公が学芸員として働く姿が描かれていました。
 では、学芸員とはどのような仕事なのでしょうか。
 実はここに、日本ならではの「法律の話」が出てきます。

(1)日本では「学芸員」は国の資格(国家資格)であり、その仕事の内容も法律に定められています。
博物館法では、第2条1項で「博物館」の定義[i]が置かれたうえで、学芸員については第4条において、次のように定められています。
 ◯ 博物館に、専門的職員として学芸員を置く(3項)
 ◯ 学芸員は、博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる(4項) 
 このように、学芸員の業務は多岐にわたり、美術館等も含む「博物館」の活動を専門性によって支える職務として、法律上位置づけられています。

(2)一方、海外(特に英語圏)では、館の規模や体制にもよりますが、より分業・専門化された文脈で、主としてコレクション管理や調査研究、展示の企画・解釈を担う職種が「curator」と呼ばれることが多いようです。厳密な意味では、日本の学芸員と完全にイコールというわけではなさそうです。
 もっとも、近年は特に美術分野において、学芸員資格の有無にかかわらず、展覧会の企画・構成・統括を行う人を「キュレーター」と呼ぶことも増えてきた印象があります。
 なお、キュレーターが行うのがキュレーションで、いわば展覧会を企画し、統括しながら形にしていくイメージです(このキュレーションという言葉は、今や美術の世界にとどまらず、情報の収集、選別、編集といった行為を指すものとしてIT分野等でも用いられています)。

 では、学芸員資格はどのように取得するのでしょうか。
 資格の取得方法については、博物館法施行規則で定められています。
取得方法は、試験に合格する方法や、大学に設置された博物館学課程(学芸員課程)を履修する方法などいくつかあります。後者は実務に必要な科目を体系的に学び、所定の単位を取得することで資格を得られるものです。私自身も、大学での課程履修により学芸員資格を取得しました。学内での講義や演習に加え、博物館や美術館での実地実習もさせていただき、実際の美術品をもとに展示のコンセプトを構想し、企画展として発表した経験は、時を経た今でも心に残っています。
 もっとも、学芸員資格を持っているからといって、それだけで学芸員として働けるわけではありません。実際には、各施設の募集内容によりますが、狭き門の中で、さらに高度な専門性や研究実績が求められることが多いのが実情です。
また、博物館法上の「博物館」に該当しない施設もあり、運営形態・規模も多様で、求められる専門性もさまざまです。こうした事情もあり、美術館等でキュレーションを担う人が、必ずしも学芸員資格を持っているとも限りません。

 学芸員の仕事の一つであるキュレーションは、現場における創造性を担う仕事ともいえます。
 このような視点から見て、興味深い展覧会に出会いました。
 フランスの建築史を体感できる博物館での企画展で、特に印象的だったのは、中世の礼拝堂やフレスコ画を内在する歴史的建物に、20世紀の抽象的でカラフルな絵画作品を展示していた構成です。各部屋ごとに、建物内部の装飾の美しさと、複数作家の絵画がおもしろく組み合わされ、響き合うように配置されていました。
 見る側にとっては、
 ◯ 空間そのものの歴史的な美しさ
 ◯ 作品の美しさ
 ◯ それらが出会うことで生まれる新しい見え方
という、一粒で三度おいしいような感覚がありました。
 どの部屋にどの作品を合わせるか、といった工夫が問われるものであり、キュレーションする側にとっても、大きなやりがいと面白さがあるのだろうと想像させる、印象的な展覧会でした。
 展覧会は、作品と空間と時間が出会って、はじめてかたちになります。そのかたちを整え、意味を編み直していく学芸員やキュレーションの仕事の奥深さを、あらためて感じました。
 法律で定められている学芸員資格という制度は、そうした仕事を、「博物館」の社会的役割を前提に支える仕組みとして位置づけられているのだと思います。


[i]  第2条1項「この法律において「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、併せてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関(社会教育法による公民館及び図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)による図書館を除く。)のうち、次章の規定による登録を受けたものをいう。」と規定されています。