コラム

出生時育児休業(産後パパ育休)がはじまります!

2022.03.18

執筆者 弁護士 古家野 晶子

 コロナ禍により、かつてない程に健康や家族など日々の暮らし方に世間の意識が向いた2年間だったように思います。そんな中、昨年、男性が育休を取りやすくするための法改正がなされました。
今年4月から段階的に施行されますので、厚労省のホームページには、改正を踏まえたモデル規程やQ&Aが掲載されています。就業規則の変更等がまだの場合はお急ぎください。

出生時育児休業(産後パパ育休)とは?

 今回の改正の目玉は、なんといっても今年10月施行の「出生時育児休業(産後パパ育休)」です。「男性版産休」とも呼ばれ、子の出生後8週間以内に最長4週間取得できる特別の育休のことを指します。産後8週間は女性は就労禁止の「産休」期間ですので、養子の場合を除き、男性専用の育休制度です。別途、通常の育休も取得できます。

出生時育児休業は、通常の育休と比べて、次のような柔軟性があります。

 1.申出期限が原則休業の2週間前まで(通常の育児休業は原則1か月前まで)

 2.2回に分けて取得可能(ただし初回申出の際にまとめて申し出ることが原則)

 3.労使協定を締結している場合に限り、労働者と事業主が合意した範囲内で、事前に調整した上で休業中に就業することが可能(通常の育休では、休業中の就労は臨時的・一時的な場合に限られる)

30周年となる男性育休

 育休は女性が取得するもの、というイメージのある方ももしかするといらっしゃるかもしれません。
それもそのはず、育児休業は、当初は努力義務で、対象は女性のみでした(昭和47年の勤労婦人福祉法)。

 その後、平成4(1992)年4月施行の育児休業法制定時、「育児休業」が労働者の権利として規定されるのと同時に、男女共通の権利となりました。

 もっとも、平成22(2010)年6月施行の改正で撤廃されるまで、産後8週を除いて、労使協定を定めることにより、配偶者が専業主婦(夫)や育休中である場合に育児休業を拒むことのできるルールがありました。
産褥期(産後8週)の育休取得も進まず、男性の育休取得率は30年間低迷しました(2015年まで3%未満、その後伸びて2020年にはじめて10%を超えました)。

いよいよ叶う?夫婦での育児スタートの共有

 産褥期は特に母子のみでは生活が成り立ちませんが、核家族でも父親は仕事で不在であることがこれまでは一般的でした。しかし今後は育児のスタートを夫婦で共有するのが当たり前になるかもしれません。
今回の出生時育児休業制度で肝になるのが、上記「3.」のルールです。担当する仕事があるのに長期の休みを取るのは出産する女性でも簡単なことではありません。男性は、女性と違って、完全に休業するまでの必要を感じないケースも多いでしょう。

育休中の就労を可能にする「3.」の制度を上手に活用すれば、男性にとって働き方の選択肢が増え、それぞれの家庭のニーズにマッチした形で育児を担うことができます。使用者にとっても、要件を満たした育児休業の申出を拒むことはできませんので、合意の範囲で仕事を担ってもらえれば助かるでしょう。労使協議が必要ですので、早めの準備をお勧めします。 

 今回の改正では、通常の育休も2回までの分割取得が可能になり(今年10月施行)、制度の柔軟性がアップしました。また、妊娠・出産を迎える労働者に対する個別の周知・意向確認の措置が使用者に義務付けられました(今年4月施行)。

 今回の改正が功を奏し、新しい命を社会全体で温かく迎える意識が高まることを期待します。改正対応でご不明な点はぜひご相談ください。