お知らせ

旧姓による商業登記の是非をめぐる審査請求の結果が出ました

2019.04.02

2018年9月下旬に、通称として使用している婚姻前の氏名(いわゆる旧姓)による商業登記の是非をめぐって京都地方法務局長に対して審査請求を行っていましたが、このたび、本年3月25日付で請求棄却の結果が出ましたのでご報告します。

京都新聞でも、本日の朝刊で取り上げてくださいました。

裁決書の一部を以下に引用します。今回の裁決書と審理員の意見書をもとに、引き続き是正を働きかけたいと思います。

本審査請求の狙いはこちら

1 主文
 本件審査請求を棄却する。

2 事案の概要
(1)平成30年2月15日,審査請求人は,京都地方法務局法人登記部門に対し,平成30年2月1日に古家野品子が社員として加入したことによる社員の変更に係る弁護士法人古家野法律事務所(会社法人等番号1300-05-009410)の変更登記申請(平成30年2月15日受付第297号,以下「本件登記申請」という。)をした。
(2)処分庁は,本件登記申請に係る申請書の記載「古家野晶子」が添付書面の記載「**晶子」と合致しないことを理由として,平成30年4月4日,組合等登記令(昭和39年政令第29号。以下「組登令」という。)第25条におい7て準用する商業登記法(昭和38年法律第125号。以下「商登法」という。)第24条第9号の規定に基づき,本件登記申請を却下する旨の処分(以下「本件却下処分」という。)をした。
(3)審査請求人は,平成30年9月21日,京都地方法務局長に対し,本件却下処分の取消しを求める審査請求をした。

3 関係法令等の定め
(1)弁護士法人は,政令で定めるところにより登記しなければならず(弁護士法(昭和24年法律第205号)第30条の7第1項),その登記については,他の法令に別段の定めがある場合を除くほか,組登令の定めるところによる(組登令第1条,別表)。
 したがって,弁護士法人は,組登令第2条第1号から第5号までに掲げる事項のほか,次の事項を登記しなければならない(組登令第2条第6号,別表)。
   社員(弁護士法人を代表すべき社員を除く。)の氏名及び住所
   合併の公告の方法についての定めがあるときは,その定め
   電子公告を合併の公告の方法とする旨の定めがあるときは,電子公告関係事項
 また,弁護士法人において登記事項に変更が生じたときは,2週間以内にその主たる事務所の所在地において変更の登記をしなければならず(組登令第3条第1項),変更の登記の申請書には,その事項の変更を証する書面を添付しなければならない(組登令第17条第1項)。
(2)弁護士法人においては,社員の氏名は定款の絶対的記載事項である(弁護士法第30条の8第3項第5号)。そのため,新たな社員が弁護士法人に加入するためには定款の変更が必要であり,これには総社員の同意を要する(同法第30条の11第1項)。また,社員は弁護士でなければならない(同法第30条の4第1項)。
 したがって,組登令第17条第1項が規定する弁護士法人の社員の加入による変更の登記に添付すべき「変更を証する書面」には,具体的には,定款,総社員の同意書及び日本弁護士連合会会長の発行する資格証明書(以下「日弁連証明書」という。)が該当する(平成14年3月25日付け法務省民第717号商事課長通知第2の3(1)参照)。

4 審査関係人の主張の要旨
<略>

5 理由
 本件登記申請は,古家野晶子が弁護士法人の社員として加入したことを理由とする変更登記申請であるため,申請書には,組登令第17条第1項の規定により社員の変更を証する書面を添付しなければならない。上記3(2)のとおり,同書面には,定款,総社員の同意書及び日弁連証明書がこれに該当するところ,本件登記申請においても,これらの書面が添付された。
 本件登記申請に係る申請書における登記すべき事項(商登法第17条第2項第4号)の社員の氏名の記載は「古家野晶子」であり,また,添付書面である定款及び総社員の同意書における社員の氏名の記載は「古家野晶子」である。他方,添付書面である日弁連証明書における社員の氏名の記載は「**晶子」である。
 そうすると,本件登記申請においては,申請書の登記すべき事項並びに添付書面である定款及び総社員の同意書に記載された社員の氏名に係る記載が,日弁連証明書の社員の氏名に係る記載と合致しないことから,組登令第25条において準用する商登法第24条第9号にいう「申請書又はその添付書面の記載又は記録が申請書の添付書面又は登記簿の記載又は記録と合致しない」場合に該当し、申請を却下すべきものと認められる。
 したがって,処分庁がした本件却下処分は適法である。
 以上のとおり,本件却下処分を違法と主張する本件審査請求には理由がないから,行政不服審査法第45条第2項の規定により,主文のとおり裁決する。