今年4月1日、私人間の権利義務関係を規律する基本法である「民法」が、制定以来、実に約120年ぶりに大改正されます。
 多くの方に影響のある改正が多数含まれていますが、今回は特に知っておいていただきたい以下の2点に絞ってご紹介します。

1.極度額の定めのない個人根保証契約が無効に

 今回の改正で、個人を保証人とする場合の要件が厳しくなりました。その中でも最も多くの方に影響があるのは個人根保証契約に関するものです。
 個人根保証契約とは、個人が、一定の範囲に属する不特定の債務を包括的に保証するものを指します。
 次の①~③のケースがありますが、これらに限らず、今までの契約実務では広い場面で用いられてきました。

① 賃貸借契約において、賃借人の親族や知人、関係者が、賃借人が負担する債務について締結する。
② 会社の社長が、取引先との間の取引に関して会社が負担する債務について締結する。
③ 従業員の入社時の身元保証の場面で、従業員の親族などが、労働契約に関して従業員が負担する債務について締結する。

 こうした個人根保証契約については、保証する金額の上限が定められないことが多かったのですが、改正法では債務の種類を問わず、書面又は電磁的記録で「極度額」(すなわち、保証人が支払の責任を負う金額の上限となる金額)の定めのない個人根保証契約は無効とされることになりました(なお、貸金等債務の個人根保証については今般の改正以前から極度額の定めが必要とされています。)。
 個人根保証の条項を見かけたら、極度額の定めがあるかどうかを必ずチェックするようにしてください。

2.定型約款の新設

 約款とは、大量の同種取引を迅速・効率的に行う等のために作成された定型的な内容の取引条項のことを指します。
 鉄道・バスの運送契約等については個別の業法で約款に関する規定がありましたが、今まで民法には、約款一般について規律する条文がありませんでした。現代社会においては、インターネット取引など、大量の取引を迅速に行うため、詳細で画ー的な取引条件等を定めた約款を用いることが必要不可欠です。
 そこで、改正民法は、約款のうち「定型約款」の定義を満たすものについては、定型約款を契約の内容とする旨の合意があった場合、又は、取引に際して定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ相手方に「表示」していた場合には、定型約款の条項の内容を相手方が認識していなくても合意したものとみなし、契約内容となることとしました。

 そして、「定型約款」については、
① ある特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引で、
② 内容の全部又は一部が画ー的であることが当事者双方にとって合理的なものを「定型取引」と定義した上、この定型取引において、
③契約の内容とすることを目的として、その特定の者により準備された条項の総体
と定義されることになりました。

 具体例でいうと、鉄道・バスの運送約款、電気・ガスの供給約款、保険約款、インターネットサイトの利用規約等は定型約款に該当します。一方で、一般的な事業者間取引で用いられる一方当事者の準備した契約書のひな型や、就業規則や労働契約書等は定型約款にはあたらないとされています。

 改正民法施行日に向けて、定型約款を利用したい事業者は、自分が使っている約款の内容が「定型約款」の要件、規制に適合するよう約款の内容を変更したり、定型約款を契約の内容とする旨の合意や表示があったことを立証するための手立て(例えば、インターネットサイトの利用規約の「同意欄」「確認欄」にチェックをつけるよう求める等)を講じることになります。
 もっとも、定型約款がどのような内容でも拘束力があるというわけではなく、定型取引の特質に照らして、相手方の利益を一方的に害する契約条項であって信義則(民法l条2項)に反する内容の条項(不当条項)については、合意したとはみなされず、契約内容とはなりません。そのような懸念のある条項については、ぜひ弁護土にご相談ください。

(弁護土古家野彰平)

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