政府が主導して昨年6月に成立した働き方改革法がこの春から段階的に施行されます。
 改正法は、「労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会」を実現するため、①長時間労働の是正、②多様で柔軟な働き方の実現、③雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講ずるものとされ、従来の日本型雇用慣行のあり方を転換する、実に70年ぶりの大改革と言われています。

 もっとも、改正法の目玉ともいうべき「残業時間の上限規制」と「均等・均衡待遇の確保」は、大企業は今年4月と来年4月に、中小企業は、来年4月と再来年4月にそれぞれ施行されます。
 今年4月にどの企業も共通して施行されるのは、
 ①5日間の年休指定義務化
 ②高度プロフェッショナル制度の新設
 ③フレックスタイムの清算期間延長
 ④勤務間インターバルの普及促進(努力義務)
 ⑤産業医・産業保健機能の強化
ですが、関係するのは①のみという中小企業も多いことでしょう。

 そうはいっても、今回の法改正に対応する以前に、点検していただきたいことはいろいろあります。
 例えば、タイムカードを導入していても残業時間を30分単位で切り捨てていたり、「管理監督者」にあたらない人を管理職扱いをして残業代を支払わなかったり、雇入れの際に「労働条件通知書」を交付できていなかったり、といったことはありませんか。よく見聞きする話ですが、どれも違法です。

 また、京都には小規模な事業所が沢山ありますが、常時雇用する労働者が10人未満の場合、就業規則の作成義務がありませんので、たとえば、妊娠出産育児や介護との両立に直面した労働者がいたとしても、一体どのような制度があるのか労使双方法律を調べないとわからないということが起こります。そうした小規模なところでは、年休の付与や残日数管理がなされていないケースもあるでしょう。
 労働法のルールは既に十分すぎるほど複雑で、中小企業や小規模事業者がついていくのはなかなか大変です。

 そこで、大切にしていただきたいのが、現在の労務管理のあり方を点検し、法的なポイントを押さえるのと同時に、「シンプル」を追求することです。外部の専門家に依頼する場合も、自分たちが理解でき、運用可能なものになるまで「単純化」をあきらめないでいたただければと思います。既に複雑化していたらこの機会に断捨離も検討してみてください。そうすることで、制度理解が格段に高まり、御社で働く労働者にとってもわかりやすい制度となって、今後いろいろな応用が可能になるでしょうし、労使の対話もしやすくなると思います。

 さて、この大改革の向こうには何があるのでしょうか。人手不足で労働とケアに疲れた社会ではなくて、ぜひシンプルで活力のある社会を創っていきたいですね。

(弁護士 古家野 晶子)

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