この数カ月、未曾有の事態に遭遇する中で、なんとか社会生活を維持すべく、会議や講義をリモートで行ったり、各業界で様々な工夫がなされてきました。今後も一定のソーシャルディスタンスを保ちながら過ごすことが必要となりますので、このようなオンライン利用の機会はますます増えることが予想されます。

 ところで、オンライン配信を行う際に、他人の著作権が気になられたことはないでしょうか。そこで、今回はオンライン配信と著作権について、ご説明いたします。

1 原則は許諾が必要

 まず、著作権法上、不特定または多数の人へのオンラインでの配信は「公衆送信」(著作権法2条1項7号の2)にあたります。そこで、配信対象に著作物(美術や音楽、小説等)や実演等が含まれる場合には、既に著作権法の保護期間が過ぎている作品等を除き、原則として、権利者から個別に許諾を得なければいけません。

 もっとも、著作権法その他の取決めによって、許諾なく使用できる場合もあります。著作権法(以下略)30条以下には、権利の制限規定があり、これらにあたれば許諾はいりません。条文だけでは少しわかりにくいのですが、特に関係するものを以下で説明いたします。

2 例外として許諾なく利用できる場合

⑴ 学校その他の教育機関における利用(35条)の場合

ア 学校その他の教育機関で必要な場合、これまでも、遠隔合同授業(対面授業で使用している資料や講義映像を他の会場に同時送信)での利用は無許諾・無償で可能でしたが、それ以外の場面でオンラインで著作物を扱うには、許諾が必要でした。  

イ 今般、法律が改正され、2020年4月28日以降、営利を目的としない教育機関において、一定の額の補償金を支払うことで、授業の目的で必要と認められる範囲の著作物を公衆送信することができるようになりました。同時一方向の遠隔授業(いわゆるスタジオ型)や異時で行われる遠隔授業(オンデマンド型)、予習・復習のための著作物等の送信等も、一つ一つ許諾を得なくても利用が可能となります。

ウ 改正後の制度では、文化庁長官が指定した団体(「一般社団法人 授業目的公衆送信補償金等管理協会」(SARTRAS))に補償金を払うことになります(無許諾・有償)が、さらに、今年度に限り、補償金を払わなくてよいことになりました(無許諾・無償で利用可能に!)。ただし、教育機関の設置者(教育委員会、学校法人等)は届け出をしてください。

エ また、利用は「必要と認められる限度」と規定されています。著作権者や著作隣接権者の利益を不当に害することとなる利用はもちろんできません。
 この制度の対象となる機関、利用方法等については、改正著作権法第35条運用指針(令和2(2020)年度版)をご参照ください。

⑵ 引用(32条)に当たる場合

 人の作品を自分の配信の中で紹介することは、「引用」の要件を満たせば、許諾がなくてもできます。適法な引用かどうかは、諸事情の総合考慮によりますが、これまでの裁判例などから、主に以下のような考慮要素が挙げられます。

 ①公表作品であること、②明瞭区別性(引用する部分をかっこ書きなどで区別)、③主従関係(引用はあくまで説明の補足程度の利用として、量・質の掲載方法を考慮)、さらにむやみに引用するのではなく、④必要性・関連性も考慮すべきであり、⑤改変しない、⑥出所を明記するといった点も重要となります。

⑶ その他 

 オンライン配信に関係する著作権法の規定としては他にも、いわゆる映り込みに関するもの(30条の2)、一般公衆に開放されている屋外に恒常的に設置されている美術作品や建築物に関するもの(46条)などがあり、いずれも条件に当たれば許諾なく利用できます。

 また、著作権法以外のルール(例:文化庁HP 記載の自由利用マーク)や契約上、一定の作品を自由に利用できることもあります。

 

 このように、オンラインでの著作物の利用に関しては特に近年法整備がすすめられており、様々なルールがあります。ここでは紙面の関係上、簡略化してご紹介しましたが、ご不明な点がございましたら、ぜひご相談ください。

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