弁護士の東岡です。
当事務所でもコラム掲載をすることとなりましたので、よろしくお願いいたします。

近年、ニュースでも話題になっておりましたので、第一回目は、パロディー商標についてお話しさせていただきます。

世間にはパロディー商品が溢れています。
他人の商標をパロディー化した商標は、いわゆる「パロディー商標」と呼ばれていますが、これはどういう場合に違法になるのでしょうか?

パロディー商標が違法であるというためには、もととなった商標と類似すると判断されることが必要となります。

①外観  商標の見た目のことです
②観念  一般的な印象のことです
③称呼  読み方のことです
④取引の実情等

類似性の判断にあたっては、上記の①から③が一応の基準となり、そのうえで、④の事情に照らして、総合的に出所混同(どこから商品がでてきたのか需要者が誤って認識すること)の恐れがあるかどうかを判断します。
判断の基準は、取引者や一般の需要者が商品購入時に通常払うであろう注意の程度となります。

具体例で考えてみましょう。
今回は2例ご紹介いたします。

 

北海道の銘菓「白い恋人」のパロディー商標

一つ目は、北海道の銘菓「白い恋人」を製造する石屋製菓が、同銘菓のパロディー商標を使用した「面白い恋人」を製造した吉本興業等に対し、商標権侵害等を理由に「面白い恋人」の販売中止を求めて提訴した事件です。

「面白い恋人」事件は、平成25年2月に和解が成立しました。
商品名の「面白い恋人」の継続使用は認められています(もっとも、パッケージは一部変更を余儀なくされ、リボン模様の装飾は除去されています)。

また、吉本興業等からの金銭支払いありませんでした。
販売地域については、近畿6府県限定になったとはいうものの、もともと吉本興業らは関西での販売を企図していました。
これらの内容を考えると、石屋製菓側が相当に譲歩したものになっているという印象を受けます。

「面白い恋人」には、「白い恋人」という言葉が含まれていますが、「面白い」という言葉は、「白い」とは全く異なる意味をもつ既成語です。
「面白い」を「面」と「白い」に分離することは考えにくいです。したがって、少なくても、観念を異にするといえそうであり、外観及び称呼も同様です。

また、「面白い恋人」は、パッケージに「大阪新名物」と記載され、関西圏に限定して販売されており、北海道では販売されていません。
そして、お笑いで著名な吉本興業がパロディー商品として販売したことが盛んにPRされていたという取引実体がありました。
このような事情を踏まえると、類似性を肯定するのは、難しく、そのような事情から和解が成立したと推察されます。

 

スイスの高級時計「フランクミュラー」のパロディー商標

二つ目は、スイスの高級時計「フランクミュラー」のパロディー商標である「フランク三浦」を商標登録した大阪市の会社が、この商標を無効とした特許庁の判断を取り消すよう求めた事件です。

 朝日新聞デジタル 
フランク三浦が勝訴 フランク・ミュラーの主張認めず:朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/ASJ4D5K77J4DUTIL03M.html
 スイスの高級時計「フランク・ミュラー」のパロディー商品名「フランク三浦」を商標登録した大阪市の会社が、この商標を無効とした特許庁の判断を取り消すよう求めた...

「フランク三浦」事件では、裁判所(知財高裁平成28年4月12日判決)によると、結論において、類似性は否定されました。

判断としては、
③称呼の点は類似するとされたものの、
①外観においては、「フランク三浦」の商標は手書き風の片仮名及び漢字を組み合わせた構成からなり、片仮名のみの「フランクミュラー」とは明確に異なり、
②観念においても、今回の商標は、「フランク三浦」との名ないしは名称を用いる日本人ないしは日本と関係を有する人物との観念が生じ、外国の高級ブランドである元となった商標の商品の観念とは大きく異なるというものでした。

また、④取引の実情についても、価格は、本家が100万円を超えるのに対し、問題の製品は4,000円から6,000円で大きく異なります。
そして、「チープにいくのがコンセプト」と代表者が発言しているように、本家とは指向性が全く異なります。
そのうえで、取引者や需用者が、商品の出所に誤認混同を生じる恐れがあるとはいえないとして、類似性が否定されました。

なお、本事件については、フランクミュラー側が最高裁に上告したとのことですので、結果を待ちたいと思います。

 

日本はパロディー商標に厳しいと言われますが、このように、必ずしも違法行為にあたるとはかぎりません。
ただ、類似性の判断は、なかなか難しい問題で、慎重に検討する必要があります。